VOL.6
ペットボトルリサイクル最大手、遠東石塚グリーンペット様に聞く。
脱炭素・GX時代、ドライポート活用で叶ったリサイクル業者のさらなる環境配慮。
取材日 2024年2月27日
◇ペットボトル再生最大手、遠東石塚グリーンペット様に聞く
吉田運送:本日はお忙しい中お時間を頂戴し、ありがとうございます。
今回はこれまで茨城県坂東市、栃木県佐野市の二拠点で運営していたインランドデポを、グローバルスタンダードにあわせ、「ドライポート」へと改称・機能アップを図っていくなかで、日ごろお世話になっています各社様に改めてインタビューさせていただきながら、さらなるサービス向上につなげていきたいと思って参りました。
早速なのですが、貴社の事業の簡単な説明をお願いできますでしょうか?
安田社長:弊社の事業は廃ペットボトルのリサイクルです。廃ペットボトルのリサイクル自体は日本でも何十年もやられているものではあるのですが、我々の場合はペットボトルをペットボトルに戻すという BtoBに特化したリサイクルを行っています。
親会社の遠東新世紀は、日本国内にペットボトルの原料となる樹脂を販売していた関係もありまして、化学会社がペットボトルのリサイクルをやるといったところにかなり特徴があるのかなと。
あとは一口にペットボトルのリサイクルと言っても、グレードがいろいろあるんですね。例えばプランターとか、下敷きとかクリアファイルなど、そういったものをリサイクルで賄うのは、技術的にはそれほどで実は高度な技術が必要とされません。気を付けなければならないのは、いわゆる食品に直接触れるフードコンタクトグレードのリサイクルですね。
吉田運送:フードコンタクトグレードはリサイクル品の中では最高峰のグレードなのでしょうか?
安田社長:はい。例えばペットボトルの中にタバコを捨てる人、ペットボトルを農薬の容器として使われている農家さんなどもいます。つまり毒性のあるものが一旦ペットボトルの中に入っている可能性があります。そういうものも含めて、フードコンタクトグレードに持っていかなればならない。フレークにし溶融してペレットにした後、除染をするというプロセスを経ないと、とても再度飲料とか食品を包むようなパッケージに使用することはできない。
プランターとか、クリアファイルですとかであれば別に口に入れるものではないのでそこまでの清浄度を必要としないわけですが、フードコンタクトグレードのリサイクルは最高峰のリサイクル技術が必要になってきます。
石油原料から作った場合と、私どものリサイクルフローで作った場合を比べると、為替の問題、石油の価格の問題がありますけれども、ほぼ同じようなレベル、もしくは我々の方が安くなります。その上、炭素排出量も格段に抑えられる。
◇圏央ドライポートを活用し、業務を平準化。劇的な効率アップを実現。
吉田運送:まさにSDGS時代にマッチした事業ですね。現時点で効率的でエコなフードコンタクトグレードのペットボトル再生リソースをお持ちですが、今後の改善の余地はありますか?
安田社長:まず1つは、製造工程におけるCO2の排出を減らしたいと考えています。製品を作る過程で利用する電気やガスもクリーンなものにこだわれないか。例えばリサイクル過程で発生するCO2 を削減できるものにするなどですね。我々に廃ペットボトルを持ってきてくださる業者さんもしくは、我々の製品を運び出す業者さんもクリーンな輸送手段をお持ちのところに優先的にお願いすることにもこだわりたいです。
吉田運送:弊社のドライポート、コンテナラウンドユースに目をつけていただいたのも、その流れということでしょうか?
羽賀さん:はい。もともと吉田運送さんがラウンドユースに力を入れられているのは、業界では有名でした。弊社は国内輸送にコンテナを使用していますので、機会があれば何か有効な取り組みができないかなと思っていました。何といっても立地がすごく良かったんです。
上山さん:弊社はコンテナに製品のレジンを充填する場所が2箇所しかなく、充填するのに1時間ほどかかります。充填するための内側に袋を取り付けるのに15分から20分かかります。一つのコンテナに製品を詰めて供給先に出荷できる状態になるには1時間半ほどかかってしまいまして、充填するのは片方6コンテナ程度になってしまいます。
空コンテナがやってくるタイミングで充填をするとなると、スケジュール調整などが大変です。ドライバーさんも待機していないといけない。それを解決する手段としてドライポートを使わせて頂ければ、必要なタイミングでドライポートから空コンテナを持ってくれば、工場側もスケジュールをきれいに立てられるし、ドライバーさんも待つことがなくなります。
羽賀さん:ドライポートを活用することで、弊社はピストン輸送でどんどん計画的にものを出せます。また、ドライポートに常に実入りコンテナがあれば、充填待ちの待機時間を無くすことが出来ると思いました。2024年問題を目前に控えても、みんなやらなきゃいけないと思っているけど、なかなかうまくいかない。弊社はたまたま吉田運送さんとこの距離感にあったことで、2024年問題というところにもクリティカルにヒットした形で対策ができるじゃないかなと思いました。経営者だけじゃなく、ドライバーさんにとっても就業時間が読めるし、環境的にも全部良くなる仕組みが作れるなと。
安田社長:吉田運送さんのドライポートがなければオペレーションの平準化ができないわけですよ。平準化ができる見込みが立ったということは、ものすごく大きなことです。
おかげで生産性がとても上がりました。生産性が上がるということは、それだけ無駄が省かれ、省エネになり、もちろんCO2排出も減る。
上山さん:今までは人力で必死に時間調整をしていました。お客さん側の時間指定がすごく厳密で、納品側で空になったコンテナを持って帰ってくるので、どちら側にも都合がいいように無駄なく回すのが不可能に近かったです。
安田社長:ドライポートが近くにあったのに、これまでこういった施策ができなかった。彼女たち(羽賀さん、上山さん)が入社したばかりでフレッシュな視点で物事を見て、あれ、ここを活用すればできるのでは? と気づいてくれた。
このタイミングで彼女達が入社してくれて業務の改善をやってくるということは、本当に素晴らしく良かったと思います。
上山さん:運送会社さん側にも負荷がかかっているので、4月以降はどうしても拘束時間を何としても短くしないといけないので、単純に引き受けてもらえなくなるっていう危機感がありました。
羽賀さん:茨城県からも2024年問題対応としてどんな対策をしましたかと聞かれていたので、もう100点満点で回答できるような取り組みができているのでそこも良かったですね。
吉田運送:提案の中で2024年問題の対応へのプレッシャーがあったんですね?
上山さん:はい、それに間に合うようにやらないと、という認識はありました。
◇ドライポートへの期待
吉田運送:今日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございます。とても参考になりました。最後に、今後さらなる機能向上を目指す、ドライポートと吉田運送にご期待いただけることをお聞かせいただけますか?
羽賀さん:一つあるのは、コンテナは海上コンテナが主流の中で、各船社のコンテナを国内輸送でうまく使えるように橋渡しをしてくれることですね。船会社の持っているコンテナの汎用性を高めてもらえないかなと。コンテナは国内輸送にも使えるということが、実運用に結びつくとドライポートもすごく広がるんじゃないかと思います。
上山さん:輸出入で使われたコンテナが行き来しているのを目にするわけですけど、その辺りを走っているものを使えないのかっていうことをちょうど話していたんですよね。
吉田運送:海上コンテナの内貨転用を考えているのであれば、実際に行っている例もあります。一例をあげるとすれば、姫路の港で空コンテナをピックして、滋賀県内の工場で荷積みし、それを姫路港から内航船で東京港まで運んで、栃木県内の倉庫で積み荷を降ろす。さらにそのコンテナを弊社の佐野インランドポートに運んでもらってコンテナをチェックして、栃木県内の輸出工場で再び荷積みをして東京港から海外へとむけて出荷する動きですね。
上山さん:なるほど、そのコンテナは船会社のものですか?
吉田運送:はい船会社のコンテナです。ほかにも一旦名古屋のセンターで荷下ろししたコンテナを、内貨転用として内航船で川崎や東京に持ってきて、そこから輸出に紐づける動きもしています。
羽賀さん:なるほど、まだまだ連携の可能性がありそうですね! 内航船もそうですが、東西の輸送の部分で空の配送を無くしていきたいというのは次の構想としてあります。その場合、まっすぐ一本で走れなくなるので、是非そのあたりのご提案を頂きたいです。
吉田運送:はい、承知しました!ドライポートの機能を上げていくことで、陸海空を総合した輸送の効率化のハブになることを私共としても目指しています。ドライポートを活用した輸送方法を、今後のCO2吸収量のクレジット化にもつなげていき、目に見える形での地球環境配慮の取り組みへと具体化していきたいと思っています。
羽賀さん・上山さん:それに賛同する企業が増えればさらにマッチングが増えるので良いですね。
吉田運送:まさにそれがドライポートの理想的な将来像です。物と人が集まれば新しい物流の提案ができるようになりますね。是非今後もいろいろご意見いただければと思います。