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VOL.7

世界中に農業機械・建設機械を輸出するグローバル企業、株式会社クボタに聞く。
ラウンドユースの重要性、ドライポートの可能性、グローバル物流のこれから。

​取材日 2024年6月7日

吉田運送:本日はお忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございます。スペシャルコンテンツとしてお届けしています、連続インタビュー企画。

第二回は株式会社クボタの武山さんにお越しいただきました。まずは簡単な自己紹介をお願いできますでしょうか?

 

武山さん:武山ALEX義知と申します。アメリカ出身の日系アメリカ人で、ロサンゼルス出身です。仕事としては、株式会社クボタの物流統括部で担当部長をさせていただいています。

 

吉田運送:物流統括部といいますと、具体的にはどういった業務でしょう?

 

武山さん:クボタの製品は海外比率がほぼ8割です。農業機械や建設機械が多くて、その6~7割が仕向け先はアメリカ市場になります。私はもともとクボタのアメリカの販売会社の輸入者として2014年まで働いていました。アメリカの立場から見ると、輸出ではなくて、輸入になるので、輸入通関から物流、現場まで担当していました。

2015年から日本に来て最初はクボタの物流子会社に所属していました。それから日本の物流に実際に触れて現職になります。

物流統括部は名前の通り、物流を統括しているのですが、クボタは年間数万本というコンテナを輸出しています。その莫大な量のコンテナの流れをどう作っていくのか、向こうへ行って船から降ろしてトラックなのか鉄道なのか。考慮しなければいけないことは多岐にわたりますね。

 

吉田運送:弊社との連携もその貴社のグローバルなロジスティクスチェーンに組み込まれているわけですね。

 

武山さん:その通りです。グローバル基準で見るとますます厳しくなる脱炭素への配慮として、ラウンドユースを組み込めるのは弊社としても大変ありがたい。例えばラウンドユースだと輸入者さんが使ったコンテナを港へ返す。輸出の場合は港から空のコンテナを取りバンニングを行う。そうすると往路は空の走行なんですよね。10年ほど前からラウンドユースの可能性を模索し、始めました。

 

吉田運送:そうでした。ラウンドユースがまだまだ一般的な時代ではなかったので、いろいろ苦労もありましたね。

 

武山さん:あの頃は船会社が一緒じゃなきゃダメだとかタイミングがバッチリじゃなきゃダメだとか、いろいろ条件がありましたね。輸入者さんが卸した時間から弊社が積む時間がすごいあったらドライバーさんが待たせることになってしまうんで、成立しないことがあったり。

実は最初は輸入者さんから我々のバンニング場所までって直接やってみたのですが、しかし、100本あったら30本位しか成立しませんでした。そこで吉田さんのデポを介して効率があげられないか模索を行った。

 

吉田運送:複数の船会社さんのコンテナを用意しておけば、これは使わないけどこっちは使うといった感じで載せ替えることができる。本格的なラウンドユースのはじまりでした。

 

武山さん:ええ、とにかく空回送にならないようにするのが大事ですね。そのためにはやっぱりいろんな人に参加してもらわなきゃ成立しない。もし、弊社だけならば、9割が輸出ですからね。色々な人に協力してもらわなければならないし、そのためにはこの仕組みを広めなきゃいけない。クボタの枠を超えてしまうのかもしれないけれども、官の方とも協力をして日本の物流環境を良くしていかなきゃいけないっていうのを考えていかなければならないと私は思っていました。

 

吉田運送:輸送効率の向上を図る、環境配慮型の輸送。今では、サプライチェーンにおける炭素排出量のSCOPE3というカテゴリといった枠内で価値観を共有できる会社も増えてきましたが、当時は理解を得るのもなかなか大変だったんじゃないでしょうか。

 

武山さん:ええ、クボタ単体として何がいいんだって最初言われる事もありましたね。しかしこれだけ大量の物を運んでいる会社として、自ずと責任は発生するし、そういう時代になるとは見込んでいました。だったら率先してやった方が絶対にいい。いろいろな人に話してみると、その空気を感じている人は意外と多くいました。

 

吉田運送:クボタとしては物流や輸出の内製化を進めていく中で、ある意味ぶつかった壁がそこだったわけですね。その壁を越えていくために、周りを巻き込み協力体制を構築する必要が出てきた。

 

武山さん:そうです。これからの時代、人手不足も重なりますし、運べるオプションを作っておかないといけない。例えば地方港も積極的に活用しておかないと。脱炭素という文脈もそうですし、物流の二重化三重化も視野に言えた上での連合・協力体制は必須だと考えます。

 

吉田運送:そういった連合みたいなものって色々な形態があると思います。野合的な集まりから、特殊法人みたいなものもありますし。将来的なお考えはありますか?

 

武山さん:現時点ではまだトライアルという認識です。完全に本番化して組織化しなきゃいけないってなったらそれはそれで検討を加えるべきかと思ってます。新しいことなんで、臨機応変が肝心ですね。色々なトライアルをして、それをやってる中で、組織化した方がいいというものが見えてきたら組織化していくような流れも必要かもしれません。

 

吉田運送:先ほどの話でもちらっと出していただいたんですが、GX・脱炭素文脈におけるラウンドユースの位置づけについて、率直なご意見をもう少しいただけますか?

 

武山さん:吉田運送さんはラウンドユースのリーディングカンパニーという認識なんですが、GXなんて言葉が出る前から取り組んでいらっしゃる。ラウンドユースが始まる前は、日本のコンテナ物流って必ず片道空でしたよね。ラウンドユースをすると半分とは言わないけれども、相当炭素排出量が減る。それだけじゃなく、空の陸送が減ることで、根本的に運べる量も増える。企業は運べないってリスクが減るうえに、脱炭素にも貢献できる。ラウンドユースをロジスティクスに絡めるだけで、それができるので、一番目に見えやすく結果がわかりやすい。

 

吉田運送:結果が見えやすい、わかりやすい。そう言っていただけるのは弊社としてもとてもうれしいです。

 

武山さん:なんか褒めてばかりですが、実際そうですよ。コンテナを内陸にプールするという発想は物流効率化の肝だと思っています。港は24 時間開いてないので、夜どうするかと言えば、港の近くで置く場所があればいいかもしれない。

そしてそこを陸送とのハブにすれば、自由度が増す。それこそ東京都や国交省への協力をいままさしく計画を立てているところなのですが、その場合のCO2削減なんかもわかりやすい数字として出せると思います。

 

吉田運送:徐々にGX化の波は大きくなってきていますが、今はまだCO2 削減の努力義務のような感じなんでしょうか。

 

武山さん:しかし、確実に来る波ではありますからね。欧州で始まりつつある炭素税が関税的に働き始めれば、炭素排出量の取引価値も値上がりしていくことも見えていますし。企業としては当然それに対応していかなければならないし、間違いなくラウンドユースの重要性はこれまでよりも上がるでしょう。

特に関東って荷物の集まる場所はいい具合に海から離れていますから、セーブできる距離がそこそこあるんですよ。京浜港から北関東に荷物がいっぱいある関東に対して、関西だと阪神港から各地域の距離は半分くらいになってしまいますね。関東と比べると、もともと距離が短いから同じ距離でもトラック1台で2回転できる。なのでトラックが拘束されるんだったら自由な方がいいよっていう企業もいます。それでも関西でもラウンドユースを推進すべきで関係者とも色々意見交換を継続しています。

ですから、この関東を素材にして、業種関係なく会社関係なく官民関係なくみんなでアイデア出しあって、仕組みをブラッシュアップしていくのがいいと思うんです。ラウンドユースは目標じゃなくてツールですからね。物を運ぶためのツールの一つ、結果、金のエンジェルがついているみたいな。そのおまけの部分をより魅力的にしていく必要がある。

 

吉田運送:ラウンドユースを活用いただくにあたり、オペレーションが高度化してしまうのでは、という心配をされている企業も多いのかなと思います。

 

武山さん:たしかにやりたいけど出来ない、二の足を踏んでいる企業がすごく多いんですよ。でもそんなに怖がることはない。クボタと同じような位置づけで、ドライポート・ラウンドユースの利用を考える企業には、始めてしまえば簡単であることを伝えたくて、私も講演を続けています。

何でも要は全部コミュニケーションじゃないですか? ラウンドユースもそうだし、新しいことは何でもそうなんですが、全部つながりと対話だと思っています。私がいっぱいお話しているからなのか、色んな声は頂きます。もちろん私は単なるクボタの社員なのでそこでなんか商売をするわけではなくて、じゃああそこをくっ付けたらスムースに行きそうだな、発展していきそうだなってことが見えてくることがあるんです。私が損をしたり私の業務に支障が出たりするんなら別ですけど、回り回って会社の将来像、社会全体にポジティブに働くなってことがあれば、労を惜しまずに動いていきたい。

活用を検討する企業について話しましたが、もし、こういったドライポートを自分で作って運営する企業があったなら、やっぱり日本一でやってる吉田運送さんのところに聞いて見て触れてっていうのがおすすめですよと私は言っています。

サファリパークじゃないけれど、それで一番勉強になるんだって(笑)。図鑑で見てるより実際見るのでは違いますからね。

 

吉田運送:本日は、いろいろな深いお話をいただきありがとうございました! 最後にドライポートに期待することについて教えてもらえますか?

 

武山さん:やっぱり発信力ですよね。邦船社であるオーシャンネットワークエクスプレスの日本で唯一のドライポートですからね。ここは条件がいろいろ揃ってて、その上、吉田さんは発信力があるわけなんですよね。この先望むのは、今以上にラウンドユースを進めて、みんなの手本であって欲しいなということがまずあります。船会社と繋がっているということは、つまりはいろんなその航路のなんだっていうところがわかっていることだと思います。グローバルな海上物流における日本のプレゼンスを維持するためにも、ドライポートという国際基準の内陸港を作られて国際物流の一端を担ってることをどんどん発信していって欲しいと思います。いろんな企業ともっとつながりを持っていただいて、さっきも言いましたが、ラウンドユースのドライポートのお手本でい続けて欲しいですね。もちろん、私も協力しますから、常に情報共有をしてやっていきましょう。

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